当院にいらっしゃる多くのお子さまたちのお口を拝見すると、歯に隙間のないお子さまが多く、一見歯並びがとても良いように見えます。
特に永久歯が萌出する時期(6歳前後)のお子さまに、この様な傾向が多く見受けられます。
そういったお子さまには、以下のような傾向が見られます。
※本症例は、患者さま(保護者さま)の同意を得た上で掲載しています。
①口元が緊張している
②意識しないと口を開けてしまう(ポカン口)
③猫背になっている。
④唾を飲み込むときに、舌が前歯を押しながら飲み込む
⑤扁桃腺が大きい(よく腫れる)
⑥睡眠時「いびき」をする(寝ぞうが悪い)
これらの傾向を見受けらえれる場合、上顎(上のあご)が小さいことが原因のひとつかもしれません。身体の成長に比例して、上顎も成長しなければならいのですが、上顎の発育が身体の発育に対して追いついていないお子さまを多く認めます。
上顎の成長を促すには「舌」が重要になります。人は食事をするときには、お口の中で2つの行動を行います。
それは、①食べ物を噛む(咀嚼)・②咀嚼した食べ物を飲み込む(嚥下)です。
その際、食べ物を飲み込む時に舌が上顎を押し付け、飲み込んでいきます。その舌が上顎を押し付ける動作が、上顎を広げるメカニズムになっています。
現代の食事には、咀嚼をして飲み込むという動作をしなくても済む「柔らかい食べもの」が多くあります。
「噛んで飲み込む」という動作を必要な食事が、「柔らかい食べもの」により、咀嚼をしないで簡単に飲み込めてしまうため、舌の機能を使うことなく食事を終えてしまいます。
また「食事中にお水やお茶などを飲む」ことは、食べ物をしっかり噛まずに流し込んでいることにもなりますので、舌の機能を使うことがありません。により、上顎の成長の機会を逃してしまい、下顎・歯並び・鼻腔の成長を妨げてしまうのです。
永久歯は乳歯の約1.5倍の大きさと言われています。
レントゲン写真をご覧いただくとお解りのように、乳歯と永久歯の大きさは異なります。顎の大きさが小さいと、永久歯の萌出するスペースがないため、無理やり萌出することになり、歯並びが悪くなってしまいます。
上顎の成長と共に鼻腔が広がっていくのですが、上顎が成長しないために鼻腔が小さいままになってしまいます。お子さまのお口を拝見すると、実年齢よりも概ね1〜2歳ほど下の年齢の上顎になっていることが多くあります。
身体は年齢と共に成長していきます。それに伴い、必要な酸素量も増えるのですが、鼻腔が広がらないことにより、鼻呼吸だけでは酸素量が足りず、結果的に口呼吸になってしまいます。
上顎が成長しないことにより、下顎の成長も妨げられてしまいます。身体の成長と共に舌も大きくなるので、下顎の成長が妨げられると舌は納まる場所がなく、後ろに下がってしまいます。
舌が下がると、舌骨(舌の骨)が気道を塞いでしまい、空気の通り道を狭めてしまいます。そのためお子様は、空気の通り道を作るために顔を前に出して、気道を確保しようとするのです。それが猫背の原因になります。
軌道を塞ぐ舌骨
軌道を確保するために猫背に
今までお話してきた小児矯正は、「10歳〜12歳までに行うべき矯正治療」です。左の図で示すように、上顎の成長は「神経型」であり、下顎の成長は「一般型」となります。
したがって、上顎の成長は10歳〜12歳を境に成長のピークに達してしまいます。一方で下顎は「一般型」なので、20歳まで緩やかに成長を続けます。
以上のことから、10歳〜12歳前後までに上顎の成長を促す矯正治療が必要なのです。
年齢 / 性別 | 6歳7ヶ月 女の子 |
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主訴 | 歯並びが重なってきた |
診断 | 叢生を伴う上顎劣成長(上顎骨成長の遅れ) |
治療方針 | 上下顎骨の拡大(成長促進) |
治療に用いた装置 |
上顎:急速拡大装置 下顎:リンガルアーチ *抜歯は行っていません。 |
治療期間 | 2年〜3年 |
費用 |
自由診療 (矯正歯科治療 44万円+調整費用 6,600円/回:税込) |
治療後のリスク |
装置装着直後は、歯が締め付けられる症状があります。また装置により話しづらい・食べづらいなどの訴えがあります。(数日で慣れてきます)
また、装置に磨き残しがつきやすく、虫歯・歯周病リスクが高まるため、予防のためのメンテナンスも行う必要があります。 |
治療開始時には、写真に示す装置をお子様の上顎に装着します。親御様が、毎晩(一日一回)矢印で示したネジを一回転します。
装置のネジが回転することで、上顎骨が拡大され、上顎骨の成長が促されます。装着当日のお子様の感想は、「喋りづらい」「ツバが飲めない」などの訴えがありますが、翌日には、装置に慣れ、通常に生活ができるようになります。
上顎の装置の回転は合計60回転となります。
写真で示すように、装置の拡大と共に、上顎骨が拡大(成長)されました。下顎にも、上顎骨の拡大(成長)に追い付くように、写真で示す装置を装着します。
この装置を装着することで、上下の噛み合わせのバランスを整え、食事を行いやすくします。
この治療を行うことで、お顔の輪郭が変化することがあります。(個人差はあります)
写真で示すように、治療開始開始時よりも治療開始から4ヶ月後の顔貌では、下顎前歯が見えず、下顎骨が小さくなったように見えます。
これは下顎骨が小さくなったのではなく、上顎骨が成長して大きくなったからです。お子さまが持つ本来の成長発育の軌道に順応していることを示しています。
治療開始から5年後の口腔内です。乳歯から永久歯に生え変わり、歯並び・噛み合わせともに安定した経過を追うことができています。
現在、約4ヶ月ごとの定期検診を行い、虫歯・歯周病予防を行なっています。
小児矯正歯科・相談を行なっています。
当院では、お子さまの矯正をお考えの親御様のために、随時相談を行なっています。
ご自身のお子さまが同じような症状をお持ちでしたら、ぜひ当院へご相談下さい。
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